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2026/04/04

タイガー・ウッズはオピオイド依存症?

先日、タイガー・ウッズが再び酩酊状態での自動車事故というニュースが報じられました。タイガー・ウッズの自動車に関係するトラブルはこれで4回目ですが、その内2回はDUIによるものです。

DUIと言うのは我々日本人には聞きなれない言葉ですが、Drive Under the Influence の略で、直訳すると「影響下にある状態での運転」、という意味です。日本ではDUIは飲酒運転と訳される場合が多いですが、正確には「飲酒または薬物の影響下での運転」という意味です。

酩酊状態での運転と言えばほぼ100パーセント飲酒が原因の日本では、あまりピンときませんが、アメリカでは今回のタイガーの様に薬物の摂取で酩酊状態になって運転してしまう人が結構いる様です。アメリカではなんと、DUIで捕まる人の2030%は飲酒ではなく薬物によるものだそうです。日本では考えられませんよね? 

  何故、アメリカではこれほど薬物で酩酊状態になる人が多いかと言うと、アメリカにはオピオイド依存症の人が多いからです。オピオイドとは麻薬性鎮痛薬の事で、末期がんの患者の痛みを和らげるために処方されるモルヒネは代表的なオピオイドです。オピオイド依存症と言うのは少し乱暴に言ってしまえば、「合法的な麻薬中毒」と言っても良いかもしれません。

オピオイドは、日本では強い鎮痛薬への患者の心理的なハードルが高く、また、医師側も過剰処方は査定対象になる為、がん患者以外にあまり処方されることはありません。一方アメリカでは、痛みの訴えに対して強い鎮痛剤を出す事が患者満足に繋がる傾向があり、またある製薬会社が1995年頃から「オピオイドは常用性が低く安全な鎮痛剤」として積極的に販売し始め、多くの医師がオピオイドを処方するようになった為、依存症になる人が徐々に増加して行った訳です。オピオイド依存症になった人々は医者から処方箋がもらえなくなると、非合法な方法でオピオイドを入手したり、ヘロインの様な非合法な薬物に手を出してしまったりして、正真正銘の麻薬中毒者になってしまうなど、オピオイド依存症はアメリカの大きな社会問題になっています。

 今回タイガーの体内から検出されたオピオイドは医師から処方されたもので、タイガーが違法にオピオイドを入手したわけでは有りません。また、オピオイドに合わせて睡眠薬や抗不安薬、医薬用大麻と言った処方薬もタイガーの体から検出されたので、タイガーが酩酊状態に陥ったのはオピオイドの過剰摂取というよりは複数の薬の飲み合わせが原因の様です。 いずれにせよ、タイガーが「オピオイド依存症である」と公式に診断・公表された事実は有りませんが、タイガーの怪我の歴史を考えると、オピオイド依存症であっても不思議は無いように思います。

タイガーは若い頃から爆発的なスウィングスピードと弛まぬトレーニングにより身体を酷使し続けた結果、1994年から2017年の間に大きなものだけで6回(左膝3回、腰3回)も手術を受けています。これに加えて2021年の生死も危ぶまれる様な自動車事故の大怪我で複数回、脚の手術を受けているわけですから、タイガーが長期間に渡ってオピオイドを処方されていた事に疑問の余地はありません。

タイガーの怪我の歴史を見ると、PGAのトッププロが怪我と無縁でいる事が如何に難しいか良くわかります。ゴルフによる怪我で長く戦列をはなれた事がないトッププレーヤーはスコッティー・シェフラー位ではないでしょうか?(シェフラーの場合、もしかすると、あの独特な脚の動きが、が膝や腰への衝撃を和らげているのかもしれません。)

一方、アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラス、ゲーリー・プレーヤ、トム・ワトソンと言った往年の名プレーヤーは皆、大きな怪我無く現役を全うしています。何故、昔のプレーヤーは怪我と無縁でいられたのでしょうか?私は、一番大きな要因はスウィンス・スピードの違いだと思います。現代のトッププレーヤーはスィング・スピードの速さに身体が耐えられないのだと思います。

1970年代のPGAツアープレーヤーの平均ヘッドスピードは47m/s でしたが、現在の平均は52m/sです。勿論50年前と今ではシャフトの重さもヘッドの素材も違うので、一概に比較は出来ませんが、ヘッドスピードがこれだけ速くなっているのは、①クラブの進化(軽くなり、また思い切り振っても曲がりにくくなった)、②スィング理論の変化(地面反力などを取り入れヘッドスピードを最大化する打ち方)、③フィジカルの強化 の三つの要因によるものだと思います。

三番目の「フィジカルの強化」ですが、現在のPGAでは殆どの選手はヘッドスピードを上げるために筋トレを行っています。実はこの筋トレと言うのが両刃の剣なのです。筋肉は血液が豊富に流れている為、筋トレにより比較的短期間で強く、大きくなりますが、腱や靭帯は血流が乏しく、強化されるのに時間がかる為、筋トレにより筋肉と関節の力のバランスが狂ってしまい、ケガのしやすい身体になってしまう訳です。また、筋肉を付けすぎると筋肉が邪魔をして可動域が狭まり、捻転しにくくなるのですが、そこで無理に捻転させると、そのしわ寄せが腰や手首に来てしまうのです。

タイガーの場合は全盛期にはヘッドスピードが最大57.7/sもあったそうですから、そのスィング・スピードを受け止める左膝には、非常に大きな負担がかかっていたのだと思います。また、タイガーの驚異的な大胸筋の発達が可動域の制限を起こし、それを補うために腰への負担が大きくなった様です。実は、タイガー自身もこれを認めていて、2017年の腰の手術以降、大胸筋を大きくするより、「侠客の柔軟性」と「臀部の活性化」に重点を置いたトレーニングをする様になったそうです。

タイガーは暫く療養に専念するそうです。オピオイド依存症の治療かどうかはわかりませんが、いずれにしても、一日も早く身体を万全な状態に戻して、シニアツアーで再び黄金時代を築いてほしいですよね。