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2025/10/11

国宝

今、巷で話題の邦画「国宝」。遅ればせながら私も先日観てきました。映画を観る前に、予習では有りませんが原作を読みました。結構チカラ入っています。原作本は上下巻合わせて800ページに及ぶ長編大作ですが、小説は小説で大変面白かったです。

私は、中学校からの友人が片岡市蔵という歌舞伎役者だという事もあって、彼の舞台を中心に年に45回は歌舞伎伎を観に行っています。結構な歌舞伎ファンです。ですから歌舞伎を題材にした小説も何冊か読んでいますが、小説「国宝」は私的には今まで読んだ歌舞伎小説の中でも一位、二位を争う面白さでした。

映画「国宝」も評判通りの面白さで、多くの方々の感想に違わず、「アッという間の3時間」でした。三谷幸喜さんも「情報7daysニュースキャスター」で言っていましたが、映画では原作の数々の面白いエピソードや魅力的な登場人物が盛り込みきれなかったので、逆に「3時間では短すぎる」という感じでした。今度は時間制限のないNETFLIXの連続ドラマかなんかで、キッチリと小説をなぞったものを作って頂けたら、こちらも大ヒット間違い無なのではないでしょうか。

「国宝」は家系を重視する歌舞伎界において、任侠の家に生まれた主人公が歌舞伎役者の家へ引き取られ、最終的には人間国宝に迄上り詰めると言う話です。歌舞伎界では歌舞伎役者の家に生まれなければ、大きな役が付く役者にはなれません。ただし歌舞伎の家に生まれなくても芸養子になれば、役者の御曹司と同様に扱われます。弟子<部屋子<芸養子<御曹司、というヒエラルキーです。一般家庭の出身で一番有名なのはなんと言っても国宝のモデルとなったとも言われている現、人間国宝の坂東玉三郎です。ただし彼の場合は芸養子ではなく、戸籍上も14代目守田勘彌の養子に入っています。

ちょっと前置きが長くなりましたが、今回のテーマは「血筋」です。まあ今風に言えばDNA(遺伝子)って言う事でしょうか。歌舞伎界の御曹司は殆ど例外なく、皆良い役者になっています。でもこれがDNAのお陰かと言うと、私はそうでは無いように思います。歌舞伎役者の家に生まれた子は小さい頃から、踊り、鳴り物、唄、三味線など毎日、厳しい稽古を重ねて育っていきます。生まれた時から良い役者になる為の長い道のりを歩まされるんですね。ですから歌舞伎はDNAというよりは、小さい頃からの修行の結果によって、名優の子供が名優に育っていくのだと思います。

一方、ゴルフはどうでしょう?ゴルフにDNAは関係しているでしょうか?一般的に言えば、スポーツにはDNAが大いに関係していると思います。多くのスポーツにおいて重要な要素を占める体格、身体能力、運動神経といったものは、間違いなくDNAによる影響が大きいと言えます。皆さんも、大谷選手のご両親を見ると「この親にしてこの子あり」と納得しますよね?少なくともウチの家系のからは絶対に大谷選手みたいな子供は生まれないと言う事は断言できます。

 しかし、ゴルフに限って言えば、他のスポーツ競技よりはDNAの影響が少ないのではないかと思います。何故かと言うと、ゴルフでトッププロになるのに、体格とか身体能力が占める割合は比較的少ないからです。勿論、ドライバーショットやロングショットに関して言えば、体格が大きい人や身体能力が高い人の方が有利だと思いますが、100ヤード以内のショートゲームになってくれば、体格や身体能力は殆ど関係なくなってきます。

 ですから、ゴルフで親子で活躍している例は、それほど有りません。思いつく例だと、ツアー通算73勝の杉原輝プロの子、杉原敏一プロが中日クラウンズで優勝した事ぐらいでしょうか。ジャンボ尾崎プロや中島常幸プロの長男もプロになりましたが、二人ともツアーで勝つことはできませんでした。

 海外に目を転じてみると、一番有名なのは何といってもジェイ・ハース、ビル・ハースの親子ではないでしょうか。お父さんのジェイはツアー9勝、シニアツアー18勝。息子のビルもツアー6勝の押しも押されぬトッププロで、2011年にはフェデックスカップの年間王者に輝いています。

 その髭と体形からセイウチ(The Walrus)の愛称で親しまれていた、ツアー13勝、シニアツアー9勝のクレイグ・スタドラーの息子、ケビン・スタドラーもPGAのツアープロです。ケビンは体形もお父さんにそっくりで、まさに父親のDNA100%受け継いだ感じですが、ツアーでの勝利数は1勝に留まっています。

PGAツアーの長い歴史の中でも、今まで親子優勝したのは10組だけだそうですから、やはり「ゴルフにDNAは関係ない」という結論で良いのではないかと思います。

 ところが、話は少しややこしくなりますが、親子ではなく、兄弟、姉妹に目を転じると、これは結構います。なんと言っても一番代表的なのは、尾崎三兄弟です。長男の将司が94勝、次男の健夫が15勝、三男の直道が32勝で合計勝利数はなんと141勝です。

 その次に有名なのは宮里三兄弟でしょうか。藍ちゃんは日米ツアー通算25勝、長男の聖志が1勝、次男の優作が7勝です。中島三兄弟も負けていません。ご存じ長男の中島常幸プロはツアー通算48勝。妹の恵利華はツアー4勝、弟の和也もツアー1勝です。

 最近では、それこそDNA的には殆ど同じの岩井ツインズを筆頭に、堀奈津佳・琴音、河本結・力、香妻琴乃・陣一朗など、兄弟姉妹で二人ともツアーで勝っているプロは結構います。

 親子で見たときは「DNAは関係ない」と言う結論でしたが、兄弟はどうなんでしょうか?私は、やはりあまりDNAは関係していないと思います。DNAというより「兄弟が同じ環境で育った」と言う事が大きいと思います。宮里三兄弟には宮里優と言うティーチングプロの父さんがいて、3兄弟が幼い頃からゴルフを教えていた訳です。中島三兄弟の父親もアマチュアゴルファーとして活躍し、子供三人に小さい頃から「巨人の星」の星一徹のゴルフ版といったスパルタ教育をしていたそうです。やはり歌舞伎と同じように、ゴルフにおいてもDNAよりも小さい頃からの修行が将来の名選手を作るんですね。